高校入試と女性作家

じゃぁ誰の本を読むのか?

以前に掲載した『女性作家の作品を読んでおこう』について「じゃぁ誰の本を読むのか?」という声がありました。入試対策を目的に物語(小説)を読むことには少々疑問も感じるのですが、福島県の高校入試問題の国語で過去10年間に出題された物語文の作者は、あさのあつこ(女性)、草野たき(女性)、阿部夏丸、風野潮(女性)、堀米薫(女性)、瀬尾まいこ(女性)、阪口正博、まはら三桃(女性)、大崎梢(女性)、土橋章宏と10人中7人が女性なのです。この結果は、女性作家の層が厚い児童文学の作品が採用されるケースが多いせいかとも思うのですが、かつてはハードボイルド作家として鳴らした清水辰夫の男臭い作品も出題されていたことを考えると、女性作家の割合が大きいことを近年の傾向として捉えるべきなのかもしれません。参考に全国の公立高校の入試で出題が多かった作品を、この3年間についてみてみると

平成27年度「クラスメイツ(森絵都/偕成社)」2014年(平成26年)5月発行

平成28年度「春や春(森谷明子/光文社)」2015年(平成27年)5月発行

平成29年度「襷を、君に。(蓮見恭子/光文社)」2016年(平成28年)2月発行

がそれぞれの年度の最多出題で、やはり女性作家の作品が好まれているようです。特に27年度の森絵都「クラスメイツ」は、前期と後期の2巻の中で24人のクラスの1人1人についてそれぞれの目線から24(章)の物語が展開されるのですが、入試で出題された4つの道県の問題はいずれも第1章からの出題でした。どうやら出題者に好まれる内容というものが存在することは確かなようです。

出題者としては他の都道府県の過去問とカブラナイようにするため、入試の前年に出版された作品を問題に採用することが多くなるのですが、受験生が新刊本の中からそれを探り当てようとするのにはちょっと無理があるのではないでしょうか。そもそもその作品を読んでいたからといってスラスラと問題が解けるという保証はないのですから、物語の雰囲気に慣れておくということこそが大事なのだと思います。となると結局は入試で出題された本や作家を読めば良いのではないでしょうか。阿部夏丸や瀬尾まいこの作品などはこれ以前にも出題されていますし、同じ作家であっても出題者は何かしらの発想のもとにそれらの作品(作家)を選んでいるのでしょうから。

 

本を読むための動機としてはいささか不純だとは思うのですが、それが読書の習慣につながるのであれば受験読書も悪くはないのかもしれません。