【塾の見解】数学における文章問題の読み方(連立方程式①)

分割して掲載した「数学における文章問題の読み方(連立方程式①)」をまとめました。

 

問題文を読むためのトレーニングをしよう

数学の文章問題を解くためには,道のり・速さ・時間や,割合,整数などの関係を文字で表せることが前提となります。まだ計算のための基本技法がマスターされていない場合にはそちらの訓練を急ぐようにしましょう。

基本技法が取得できていれば次に取り組むのが問題文の読み取りなのですが,うまく式が作れないと『できない』とか『意味が分からない』と言ってすぐに諦めてしまう中学生がいます。これはおそらく問題文を読むための訓練が不足していることに原因があるのではないかと考えられるのです。文章問題の演習をするときにいきなり問題を解こうとするのではなく,まず文章を読むことそのものに意識を向けてみてはどうでしょうか。数学の文章問題では国語の読解問題の文章ほど複雑な内容になることはありません。逆に文章問題に特有の表現や語句が使用されていることで,それらが読解のヒントにさえなるケースも多いのです。つまりそれらの表現や語句を押さえることができれば,問題の解決へ大きく前進することになるのではないでしょうか。そこで福島県立高校入試問題の過去問を使って,問題文を読むための訓練を試してみたいと思います。

 

次の問題文を読んで,下の➀,➁の問いに答えるためには,どの語句に注目しながら読み解けばよいのかを考えましょう(使用する文字はxとyの2種類とします)。

なお,この問題では2点の所に入った回数と3点の所に入った回数をそれぞれx回,y回とすると 10+x+y=50-14 と 10+2x+3y=71 の2つの方程式を作ることができ,xとyがそのまま答えとならないことに注意しさえすれば比較的簡単に解け,なかなか鋭い解法となるのですが,今回は問題文の読み取りのトレーニングに主眼を置いていますので,このようなアプローチの仕方については別の機会に譲りたいと思います。したがって①については求めるものを文字で表すようにして下さい。あくまで問題文を読むための訓練だと割り切って下さい。

【問題文】

輪が入る所によって得点が1点,2点,3点になる輪投げがあり,1チームにつき50回ずつ輪を投げて,いくつかのチームで得点の合計を競い合った。

優勝したAチームの得点は71点で,50回のうち10回は1点の所に入り,14回は輪が入らず得点にならなかった。

Aチームの得点のうち,2点の所に入って得た点と,3点の所に入って得た点はそれぞれ何点か,求めなさい。なお答えを求める過程も書きなさい。

 

➀ 何を文字にしますか。

➁ 方程式にできるのはどの部分ですか。

 

連立方程式はこのように読み解こう

【問題文】

輪が入る所によって得点が1点,2点,3点になる輪投げがあり,1チームにつき50回ずつ輪を投げて,いくつかのチームで(a)得点の合計を競い合った。

優勝したAチームの(b)得点は71点で,(c)50回のうち (d)10は1点の所に入り,(e)14は輪が入らず得点にならなかった。

Aチームの得点のうち,(f)2点の所に入って得た点と,(g)3点の所に入って得た点(h)それぞれ何点か,求めなさい。なお答えを求める過程も書きなさい。

 

読解(読み方のポイント)

➀ 何を文字にしますか。

要求されている答えとなるものを,書いてある順に文字で表すのが基本です。この問題では(h)から,(f)をx点,(g)をy点とすることにします。

【注】前述のように『2点の所に入った回数と3点の所に入った回数をそれぞれx回,y回として 10+x+y=50-14 と 10+2x+3y=71 の2つの方程式を作る解法』については今回は触れないでおきます。

➁ 方程式にできるのはどの部分ですか。

方程式を作るためには,問題文の中から等号(=)または加法,減法,乗法,除法のいずれかを示す表現に着目していきます。この問題ではこれらを表す直接的な表現がとても少なく,どうにか(b)の「」がイコールを示しているだけのように感じられます。でも注意して読めば,(a)の「合計」という表現から,「得点」は『』で表されると読み取ることができるのです。ですから(b)の「」は,やはりイコールを示し,□+△=71という方程式が作れることが確定します。さらに□と△に当てはまるのは「得点」のはずですから,それが(f)と(g)であることを読み取ることはそれほど難しくはないでしょう。

さて,もう1つの方程式はどの部分で作られるのでしょう。文章中に加減乗除を示す直接的表現がないときには,「合計」または「全体」を表す数字に着目するのが読解の基本です。ここでは(c)の「50回のうち」という表現について考えてみましょう。この「~のうち」という言い方は,『~の内訳(詳細)』を示すことですから,それらを合わせればもとに戻る,つまり回数の『』が50になることを意味することになります。この表現を,ぜひ文章問題表現集の中の【加法】の項目に加えておいて下さい。さぁこれでもう1つの方程式は,▽+○=50という形になることが決まりました。

ところで,▽と○に当てはまるのが回数であることは明らかなのですが,問題文の中で50回以外に回数を表す部分は,(d)の10回と(e)の14回の2箇所だけですから,もちろんこれだけでは回数の『和』が50になる方程式は作れません。実は,ここがこの問題の最大のポイントとなっているようですのでよ~く考えてみて下さい。

 

解答に関わらない部分も文字や式に変換してみる

問題文を読むための訓練として、前回の内容を踏まえた上で語句の意味,考え方,文字や式で表すことの可能な部分をできるだけ問題にしてみました。文章問題のトレーニングを進めるときに、答えを求めただけで終わってしまうのは問題演習としては少々もったいない気がします。特に入試問題の文章はそれほどシンプルではないことが多いので,直接解答に関わらない部分でも読み取りの訓練の一環として文字や式に変換する努力を積み重ねるようにしたいものです。

【注】使用する文字は問題順にxとyだけとします。文中のアルファベットの( )は下記の問題作成のために挿入したもので,問題文そのものとの関係はありません。

【問題文】

輪が入る所によって得点が(a)1(b)2点(c)3点になる輪投げがあり,1チームにつき(d)50ずつ輪を投げて,いくつかのチームで得点の合計を競い合った。

優勝したAチームの得点は(e)71で,(d)50のうち(f)10は1点の所に入り,(g)14は輪が入らず得点にならなかった。

Aチームの得点のうち,2点の所に入って得た点と,3点の所に入って得た点はそれぞれ何点か,求めなさい。なお(h)答えを求める過程も書きなさい

 

(1) 何を文字にしますか。

(2) (a)の合計得点はどのようにして求めますか。その結果は何点になりますか。

(3) (b)の得点を全部で何点としますか。

(4) (c)の得点を全部で何点としますか。

(5) (e)の71点は何を意味しますか。

(6) (e)の71点を使って方程式をつくりなさい。

(7) (a)の所に入った回数は何回ですか。

(8) (2)から回数の求め方を考えて答え,(b)の所に入った回数を式で表しなさい。

(9) (c)の所に入った回数を式で表しなさい。

(10) (d),(f),(g)の数字を使って方程式をつくりなさい。

(11) (h)に必要なのは上記のどれなのかを示し,答えも求めなさい。

 

【解答】

(1) 何を文字にしますか。

Aチームの得点のうち,2点の所に入って得た点をx点,3点の所に入って得た点をy点とする。

(2) (a)の合計得点はどのようにして求めますか。その結果は何点になりますか。

合計得点=1回の得点×入った回数

(a)の合計得点=1(点)×10(回)=10(点)

(3) (b)の得点を全部で何点としますか。

x 点

(4) (c)の得点を全部で何点としますか。

y 点

(5) (e)の71点は何を意味しますか。

1点,2点,3点の所に入った得点の『和(合計)』が71点になること。

(6) (e)の71点を使って方程式をつくりなさい。

10+x+y=71

(7) (a)の所に入った回数は何回ですか。

10 回

(8) (2)から回数の求め方を考えて答え,(b)の所に入った回数を式で表しなさい。

入った回数=合計得点÷1回の得点

(b)の回数=x(点)÷2(点)より(x÷2)回

(9) (c)の所に入った回数を式で表しなさい。

(y÷3)回

(10) (d),(f),(g)の数字を使って方程式をつくりなさい。

10+(x÷2)+(y÷3)+14=50

(11) (h)に必要なのは上記のどれなのかを示し,答えも求めなさい。

解答で記述が必要なのは(1),(6),(8),(9),(10)で,答えは2点の所に入って得た点が34点,3点の所に入って得た点が27点。

 

連立方程式②に続きます。