【塾の見解】数学における文章問題の読み方(2次方程式②)

分割して掲載した「数学における文章問題の読み方(2次方程式②)」をまとめました。

まず「文章問題表現」を確認しておきましょう。

【等号】「同じ」,「等しい」,「~は」,「~すると」,「~したところ」

【加法】「和」,「合計」,「全部」,「全員」,「合わせて」,「より多い」,「増えた」,

「~のうち」

【減法】「差」,「より少ない」,「減った」

【乗法】「倍」,「%」,「割」,小数

【除法】 分数

 

次の問題文を読んで,下の➀,➁の問いに答えるためには,どの語句に注目しながら読み解けばよいのかを考えましょう(使用する文字はxだけとします)。

【問題文】

大小2つの長方形の花だんがある。小さい花だんのまわりの長さは28mで,縦は横よりも短い。

大きい花だんの縦と横の長さは,小さい花だんの縦と横の長さよりそれぞれ2mずつ長い。

大きい花だんの面積は,小さい花だんの面積の2倍より13㎡小さい。

このとき,小さい花だんの縦の長さを求めなさい。なお答えを求める過程も書きなさい。

 

【問い】

➀ 何を文字にしますか。

➁ 方程式にできるのはどの部分ですか。

 

より複雑な表現に着目する

【問題文】

大小2つの長方形の花だん(a)ある。小さい花だんのまわりの長さ(b)28mで,縦(c)(d)より(e)短い

大きい花だんの縦と横の長さ(f),小さい花だんの縦と横の長さ(g)よりそれぞれ2mずつ(h)長い

大きい花だんの面積(i),小さい花だんの面積の2倍(j)より13㎡(k)小さい

このとき,(l)小さい花だんの縦の長さ (m)を求めなさい。なお答えを求める過程も書きなさい。

 

読解(読み方のポイント)

➀ 何を文字にしますか。

下線部mから,下線部lをx (m)とします。要求されているのは縦の長さですが、面積絡みの問題ですから、連立方程式ではなく2次方程式になることは見当がつけやすいと思います。

➁ 方程式にできるのはどの部分ですか。

下線部aの「が」が等号(=)にならないことと,下線部bの「は」は直前の名詞が主語であることを示すはたらきをしているだけということは明らかでしょう。この下線部b以外に,等号(=)を示すお約束の表現の「は」が,下線部c,下線部f,下線部iと3箇所あります。しかも,3箇所ともその後の下線部d,g,jが「より~」という表現になっています。同じ形の表現が複数個所あるときにはどうすればよいのでしょうか。

方程式の文章問題では、左辺と右辺のそれぞれを異なった文字式で表そうとすると、その文章がどうしても他の部分よりも複雑になってしまう傾向があります。そこで読解テクニックの1つとして「候補が多数のときは複雑な表現に着目」をマスターしておいて下さい。この問題では下線部jの「より」に「2倍」が付いていることで、下線部d,gの「より」と比べより複雑な表現となっています。つまり方程式が作られる部分は下線部i,j,kに決定ということになります。

ところで,一般に下線部d,eの「より短い」は『』を,下線部g,hの「より長い」は『』を,下線部j,kの「より小さい」は『』をそれぞれ表すことになるのですが,この問題の下線部d,eについては『差』ではなく条件を示す役割になっていることに注意しましょう。

なお「より大」と「より小」の表現については『和』と『差』の使い分けが煩わしいと感じる場合には「大」-「小」が常に『差』を表すと考えて式を作ることもできるので理解しやすい方法を選択して下さい。

また、方程式が2次方程式になる場合は,問題文自体はそれほど複雑な表現にならないのにもかかわらず,意外に正答率が低くなることがありますので,取り扱いには十分注意して下さい。ちなみに,この問題の正答率は7.4%で,部分正答率も19.7%という数字でした。

 

読み取りのトレーニング

問題文を読むための訓練として、前回の内容を踏まえた上で語句の意味,考え方,文字や式で表すことの可能な部分をできるだけ問題にしてあります。問題そのものに重要なポイントが含まれているものもありますので1つ1つ考えてみましょう。

【注】使用する文字はxだけとします。文中のアルファベットの( )は下記の問題作成のために挿入したもので,問題文そのものとの関係はありません。

【問題文】

大小2つの長方形の花だんがある。(a)小さい花だんのまわりの長さは28mで,(b)縦は横よりも短い

大きい花だんの縦と横の長さは,小さい花だんの(c)(d)の長さより(e)それぞれ2mずつ長い

(f)大きい花だんの面積 (g)(h)小さい花だんの面積の2倍より(i)13㎡小さい

このとき,小さい花だんの縦の長さを求めなさい。なお(j)答えを求める過程も書きなさい

 

(1) 何を文字にしますか。

(2) 下線部aは何を意味しますか。

(3) 下線部bの縦と横の長さをそれぞれ何mとしますか。

(4) 下線部aと下線部bから考えられることは何ですか。

(5) 下線部eは何を意味しますか。またcとdの長さをそれぞれ式で表しなさい。

(6) 下線部fの面積を式で表しなさい。

(7) 下線部hの面積を式で表しなさい。

(8) 下線部gと下線部iは何を意味しますか。

(9) 方程式を作りなさい。

(10) この方程式を解くときの注意事項は何ですか。

(11) 下線部jに必要なのは上記のどれなのかを示し,答えも求めなさい。

 

2次方程式の文章題は解の条件に注意する

【問題文】

大小2つの長方形の花だんがある。(a)小さい花だんのまわりの長さは28mで,(b)縦は横よりも短い

大きい花だんの縦と横の長さは,小さい花だんの(c)(d)の長さより(e)それぞれ2mずつ長い

(f)大きい花だんの面積 (g)(h)小さい花だんの面積の2倍より(i)13㎡小さい

このとき,小さい花だんの縦の長さを求めなさい。なお(j)答えを求める過程も書きなさい

【解答】

(1) 何を文字にしますか。

小さい花だんの縦の長さをxmとする。

(2) 下線部aは何を意味しますか。

小さい花だんの縦の長さと横の長さの『和』が 28÷2=14(m)であること。

(3) 下線部bの縦と横の長さをそれぞれ何mとしますか。

縦がxm,横は(14-x)m

(4) 下線部aと下線部bから考えられることは何ですか。

小さい花だんの縦の長さは,縦の長さと横の長さの『和』である14mを2分の1した値の7mより短い,つまり x<7 であること。

(5) 下線部eは何を意味しますか。またcとdの長さをそれぞれ式で表しなさい。

『和』であることを示す。

cは(x+2)m,dは{(14-x)+2}m

(6) 下線部fの面積を式で表しなさい。

(x+2){ (14-x)+2} ㎡

(7) 下線部hの面積を式で表しなさい。

{x(14-x)×2}㎡

(8) 下線部gと下線部iは何を意味しますか。

下線部hと下線部fの『差』が13であること。

または,(下線部f)=(下線部h)-13 であること。

(9) 方程式を作りなさい。

(x+2){ (14-x)+2}={x(14-x)×2}-13

(10) この方程式を解くときの注意事項は何ですか。

2次方程式の文章問題では答えの吟味が必要で,この問題では負の数が答えにならないことと,上の(4)の条件に合ったものであることを確認する。

(11) 下線部jに必要なのは上記のどれなのかを示し,答えも求めなさい。

解答で記述が必要なのは(1),(3),(4),(5),(9),(10)で,方程式の答えはx=5,x=9だが,条件x<7から,小さい花だんの縦の長さは5mとなる。