【塾の見解】数学における文章問題の読み方(連立方程式④)

分割して掲載した「数学における文章問題の読み方(連立方程式④)」をまとめました。

「文章問題表現」をチェックする

前回までに登場した「文章問題表現」を確認しておきましょう。

【等号】「同じ」,「等しい」,「~は」,「~すると」,「~したところ」,

「~すれば」

【加法】「和」,「合計」,「全部」,「全員」,「合わせて」,「より多い」,

「増えた」,「~のうち」

【減法】「差」,「より少ない」,「減った」

【乗法】「倍」,「%」,「割」,小数

【除法】分数

 

次の問題文を読んで,下の➀,➁の問いに答えるためには,どの語句に注目しながら読み解けばよいのかを考えましょう(使用する文字はxとyの2種類とします)。

 

【問題文】

400mlの水をA,B,C3つの容器に分けたところ,AとBの水の量は等しく,Cの水の量だけが異なっていた。

次に,Aに入れた水の60%をBに,残りを全部Cに移したら,BとCの水の量が等しくなった。

このとき,最初にBとCの容器に入れた水の量を求めなさい。なお答えを求める過程も書きなさい。

 

➀ 何を文字にしますか。

➁ 方程式にできるのはどの部分ですか。

 

『等しく』という表現の捉え方に注意

次の問題文を読んで,下の➀,➁の問いに答えるためには,どの語句に注目しながら読み解けばよいのかを考えましょう(使用する文字はxとyの2種類とします)。

【問題文】

(a)400mlの水をA,B,C3つの容器に(b)分けた (c)ところ,AとBの水の量は(d)等しく,Cの水の量だけが異なっていた。

次に,Aに入れた水の60%をBに,残りを全部Cに (e)移したら(f)(g)の水の量が(h)等しくなった。

このとき,(i)最初にBとCの容器に入れた水の量 (j)を求めなさい。なお答えを求める過程も書きなさい。

読解(読み方のポイント)

➀ 何を文字にしますか。

下線部jから,下線部iのBの容器に入れた水の量をxml,同じく下線部iのCの容器に入れた水の量をymlとします。

➁ 方程式にできるのはどの部分ですか。

文章問題を解き進めていく中で,方程式を作るためのポイントとなる表現を拾い集めて,その語彙(英語でボキャブラリーといいます)を増やしていこうというのが文章問題の読み方シリーズのねらいの1つなのですが,この「連立方程式④」の問題文から新たに文章問題表現集の中に加えておいて欲しい表現は,下線部bの「分けた」です。「分ける」という言い方はそのまま除法を示しているようにも思えるのですが,「全体」をいくつかに分けていくことですから,分けたものを合わせればもとに戻る,つまりそれぞれの水の量の『和』が「全体」になることを意味します。ぜひこれを【加法】の項目に加えるようにしましょう。ここでは3つに分けられて,さらに下線部cのお約束の表現「ところ」も等号(=)を示しますから,□+△+○=全体,という方程式を作ることができます。また,この表現では「全体」を表す部分が「~を」となりますから,「(全体)を分ける」と覚えておく方がより実戦的です。ここでの「全体」は「~を」がついている下線部aということになります。

ところで下線部dと下線部hを見てください。ともに等号(=)を意味する表現の「等しく」となっています。まったく同じ表現ではあるのですが,まったく同じ単語だからといって,それがまったく同じ内容を意味するとは限らないことについては,すでに「連立方程式③」の問題で学習済みです。下線部dについては,単に「AもBもxmlである」といっているのに過ぎないということはしっかりと読み取って下さい。これに対して,下線部hの「等しく」は,ストレートにここで(下線部f)=(下線部g)という方程式ができることを示していています。このとき,どうして下線部dで A=B という方程式ができないのかと疑問を持つ人がいるのですが,文章の下線部dの段階ではAもBもxという文字でしか表すことができません。x=x では方程式としての意味はありませんから,この部分で方程式を作るのは不可能なのです。ところが下線部hの「等しく」は,下線部eの表現があることで,左辺と右辺をそれぞれ異なった文字や文字式として表すことができますから,こちらでは方程式を作ることが可能となっているのです。また,この部分で方程式を作るときには,下線部eの条件を満たした下線部fと下線部gの水の量をどのように式で表すかが,この問題の大きなポイントにもなっていますから,よ~く考えて方程式を完成させる必要があります。

なお,下線部eの「移したら」は「連立方程式③」の問題の解説にある「~すると」のグループの表現ですから,本来であればこの部分がイコール(=)で,その前後が左辺と右辺になるところなのですが,ここでは下線部hの「等しく」の方が,より強い等号(=)のサインとなっていることを読み取れるようになって下さい。

 

読み取り演習

問題文を読むための訓練として、前回の内容を踏まえた上で文字や式で表すことの可能な部分について、あえて分かり切った内容も含めて問題にしてみました。入試問題の文章はそれほどシンプルではないことが多いので,直接解答に関わらないような部分でも読み取りの訓練の一環として、読み取った順に1つひとつ文字や式に変換する努力を積み重ねるようにしましょう。

【注】使用する文字は問題順にxとyの2種類とします。文中のアルファベットの( )は下記の問題作成のために挿入したもので,問題文そのものとの関係はありません。

【問題文】

(a)400mlの水をA,B,C3つの容器に分けたところ,(b)AとBの水の量は等しく,Cの水の量だけが異なっていた

次に,(c)Aに入れた水の60%(d)Bに(e)残りを (f)全部Cに移したら,(g)BとCの水の量が等しくなった

このとき,最初にBとCの容器に入れた水の量を求めなさい。なお(h)答えを求める過程も書きなさい

 

(1) 何を文字にしますか。

(2) 下線部bのA,B,Cの水の量はそれぞれ何mlですか。

(3) 下線部aの400mlを使って方程式を作りなさい。

(4) 下線部cの水の量を式で表しなさい。

(5) 下線部dのBの水の量を式で表しなさい。

(6) 下線部eの水の量を式で表しなさい。

(7) 下線部fのCの水の量を式で表しなさい。

(8) 下線部gの方程式を作りなさい。

(9) 下線部hに必要なのは上記のどれなのかを示し,答えも求めなさい。

 

文章題の「%」の扱い方に習熟しておこう

【問題文】

(a)400mlの水をA,B,C3つの容器に分けたところ,(b)AとBの水の量は等しく,Cの水の量だけが異なっていた

次に,(c)Aに入れた水の60%(d)Bに(e)残りを (f)全部Cに移したら,(g)BとCの水の量が等しくなった

このとき,最初にBとCの容器に入れた水の量を求めなさい。なお(h)答えを求める過程も書きなさい

【解答】

(1) 何を文字にしますか。

最初にBとCの容器に入れた水の量をそれぞれxml,ymlとする。

(2) 下線部bのA,B,Cの水の量はそれぞれ何mlですか。

Aはxml,Bはxml,Cはyml

(3) 下線部aの400mlを使って方程式を作りなさい。

x+x+y=400

(4) 下線部cの水の量を式で表しなさい。

0.6x ml

(5) 下線部dのBの水の量を式で表しなさい。

(x+0.6x)ml

(6) 下線部eの水の量を式で表しなさい。

(1-0.6)x ml,つまり 0.4x ml

(7) 下線部fのCの水の量を式で表しなさい。

(y+0.4x)ml

(8) 下線部gの方程式を作りなさい。

x+0.6x=y+0.4x

(9) 下線部hに必要なのは上記のどれなのかを示し,答えも求めなさい。

解答で記述が必要なのは(1),(3),(5),(6),(7),(8)で,答えはBの容器に入れた水の量が125 ml,Cの容器に入れた水の量が150 ml。