【塾の見解】福島県立高校入試 数学①(その2)

入試問題の罠を意識した学習を

『長さx mのひもから,長さy ㎝のひもを9本切り取ると,z ㎝残るという。z xy を使った式で表しなさい』

間違いの多かったこの平成元年の福島県立高校入試問題を

『長さx mのひもから,長さy ㎝のひもを9本切り取ると残りは何m[または何㎝]になるか xy を使った式で表しなさい』

という形で出題してみると、間違いはグッと少なくなります。問題文の中のmや㎝といった、単位の違いに対応することができないわけではないようなのです。たぶん問題演習を通して「文字式の文章題は単位がポイント」という学習効果は十分に蓄積されているのでしょう。

でも冒頭の問題だと前半では「単位に注意」と意識していたのに『z xy を使った式で表しなさい』という部分を読んだ瞬間に「これは等式の変形か?」と意識をずらされることで「単位に注意」の意識が背景になってしまうようです。

たとえば日常生活の中で次のような経験はないでしょうか。

自分の部屋で勉強しているときに、台所にペンを置き忘れたことに気づいて取りに行くとしよう。すると、廊下の向こうから母親がやって来てちょっと立ち止まって「今日の晩御飯はすき焼きよ」と言う。意識はあっという間にすき焼きに引き寄せられてしまう。そして台所までやって来て「あれっ、何しに来たんだっけ?」と悩む。

桑原茂夫氏の『ちょっと立ち止まって(光村図書)』によれば「見るものの中心を決めたり変えたりするのはほんの一瞬の出来事」なのだそうです。これは「見る」を「読む」や「聞く」に置き換えてもいえることなのではないでしょうか。おそらくこのような仕組みを理解した上で、目先をちょっと変えることで間違いを誘発させてしまうのですから、やはり出題者の方が一枚上手ということなのでしょうか。もしあなたがこの問題を間違えるようであれば、中1教科書の桑原茂夫氏の『ちょっと立ち止まって(光村図書)』を読み直すことをお勧めします。

入試問題は出題までに長い時間をかけて検討を重ねながら作成されますから、受験生の理解力を試すための工夫(罠)が随所にちりばめられていると考えながら学習に取り組む必要があるといえそうです。