【塾の見解】福島県立高校入試 歴史整序問題(平成30年度)

過去10年間の問題との重複事項は4件

以前に福島県の高校入試で平成20年代の10年間に出題された歴史の整序問題に関する記事「明治維新以前」と「明治維新以降」を掲載しましたが、その内容と今年度(平成30年度)の問題について見てみたいと思います。

近年は明治維新以前とそれ以降の両方とも出題されるケースが多くなっていて、今年度の出題もそのパターンでした。また2つの設問中の8つの出来事のうち、平成20年代の整序問題と重複した事項は4件でした。

 

[平成30年度大問3]

 中国を征服するために日本の大軍が朝鮮に派遣され各地を占領したが、朝鮮の民衆や李舜臣ひきいる水軍の抵抗に加えて中国からの援軍などにより、苦戦をしいられた。

 中国人の倭寇の船が種子島に流れ着き、その船に乗っていたポルトガル人によって鉄砲が日本に伝えられた。

 甲午農民戦争をしずめるため、朝鮮が中国に出兵を求めたのをきっかけに、日本も朝鮮に出兵した。

 中国がアヘン戦争でイギリスに敗れたことを知った幕府は、異国船(外国船)打払令を廃止して、来航する外国船には燃料や食料を与えて返すことにした。

 

[平成30年度大問4]

 政府は、全国の藩主たちから天皇に土地と人民を返させる版籍奉還を行った。

 政府は、すべての藩を廃止して、かわりに府・県をおく廃藩置県を行った。

 天皇を中心とする政治にもどすことを宣言する王政復古の大号令が出された。

 政府は、地租改正条例を公布し、地価の3%を地租として、土地所有者に現金で納めさせることにした。

 

【解説&解答】

明治維新以前・以降のカテゴリーに変化が

[平成30年度大問3]  イ → ア → エ → ウ

 中国を征服するために日本の大軍が朝鮮に派遣され各地を占領したが、朝鮮の民衆や李舜臣ひきいる水軍の抵抗に加えて中国からの援軍などにより、苦戦をしいられた。

 中国人の倭寇の船種子島に流れ着き、その船に乗っていたポルトガル人によって鉄砲が日本に伝えられた

 甲午農民戦争をしずめるため、朝鮮が中国に出兵を求めたのをきっかけに、日本も朝鮮に出兵した。

 中国がアヘン戦争でイギリスに敗れたことを知った幕府は、異国船(外国船)打払令を廃止して、来航する外国船には燃料や食料を与えて返すことにした。

 

アの『李舜臣』は平成24年度に「李舜臣の水軍が、朝鮮に出兵した日本の水軍と戦った」と出題されています。イの『鉄砲伝来』は平成20年代の整序問題には未採用で、同時代の出来事としてはフランシスコ・ザビエルの来日も同様なのですが、これらが整序問題の出題対象になっていなかったのが不思議なくらいの重要事項だといえます。なお『中国人の倭寇の船』の記述には今後に向けて十分な注意を払っておきたいところです。ウの『甲午農民戦争』は明治維新以前のカテゴリーからは大きくはみ出しています。平成22年度に「甲午農民戦争を機に清が朝鮮に出兵すると、日本も清に対抗して出兵した」とありますが記述内容に変化が見られます。エの『異国船(外国船)打払令』については前年度に「日本の沿岸に外国船がさかんに現れるようになり、幕府は異国船(外国船)打払令を出した」と出題されたばかりで、整序問題として2年連続での出題は少々驚きではあったのですが、記述内容にはかなりの進化が見られます。

この整序問題は日本と中国の関係をテーマとした設問なのだと思われますが、それぞれの記述がしっかりとした内容となっていて今後の参考となりそうです。問題としてはアとイの順番さえ間違わなければ正解することはそれほど難しくなかったものと思われます。

 

記述式問題への転用に留意する

[平成30年度大問4]  ウ(1867) → ア(1869) → イ(1871) → エ(1873)

 政府は、全国の藩主たちから天皇に土地と人民を返させる版籍奉還を行った。

 政府は、すべての藩を廃止して、かわりに府・県をおく廃藩置県を行った。

 天皇を中心とする政治にもどすことを宣言する王政復古の大号令が出された。

 政府は、地租改正条例を公布し、地価の3%を地租として、土地所有者に現金で納めさせることにした。

 

アの『版籍奉還』とエの『地租改正』は平成20年代の整序問題には登場していませんが、整序以外の問題にはなっていました。特に地租改正は頻出で、前年度にもしっかりと出題されています。ウの『王政復古の大号令』についてはあまり出題の機会はなく、大政奉還や五箇条の御誓文の方が出題の対象となるケースが多くなっています。イの『廃藩置県』は平成20年度に「政府は廃藩置県を行い、全国を直接治める中央集権の形をととのえた」と出題されています。

1867年から1873年までのかなり短い期間における整序問題ではあるのですが、王政復古の大号令によって江戸幕府から明治政府への政権交代(大政奉還)となり、政府が版籍奉還を行ったことで廃藩置県ができ、その後の地租改正が可能になるという一連の流れを考えることができさえすれば意外に易しい問題だったといえるのかもしれないのですが…

なお今回のそれぞれの選択肢の内容は、今後の入試において記述式の説明問題に転用されそうな雰囲気も感じられますので十分留意しておきましょう。