【塾の見解】高校入試「世界の気候・雨温図」

熱帯は赤道を押さえることから

分割して掲載していた「世界の気候 雨温図」を一括して掲載します。

高校入試の社会の地理分野ではかなりの頻度で雨温図を使った問題が出題されます。世界や日本の各地域の学習内容にはほとんど気候が含まれていて、雨温図はそれぞれの気候の特徴をはっきりと表しているため問題の中で使用されることが多くなります。そこで世界の気候の雨温図からそのポイントを考えていきたいと思います。

世界の気候を考えるときには、各気候帯を押さえるためにまず赤道の位置をしっかりと把握するところから始めます。押さえるのは3か所です。

① アフリカ大陸のギニア湾(ギニア湾岸地域はカカオの産地です)

② 東南アジアのシンガポール(マレー半島の先端です)

③ 南米大陸のアマゾン川の河口(海岸線が凹んでいるところです)

熱帯の気候には「熱帯雨林気候」と「サバナ気候」の2つがありますが、「熱帯雨林気候」が分布するのは基本的に赤道近辺となります。このために赤道の位置は絶対に把握しておかなければならないのです。

「サバナ気候」は「熱帯雨林気候」を囲むように分布していますから、赤道の位置を押さえることで「熱帯雨林気候」の分布がわかれば、同時に「サバナ気候」もわかるということになります。

入試では「熱帯雨林気候」の特徴は『一年中高温多雨』とスコールを覚えておけばよいのですが、「サバナ気候」は降水量についての説明問題になることがあるので『雨の多い雨季と極端に雨の少ない乾季に分かれる』と書けるようにしておきましょう。

問題のバリエーションを考える

雨温図は月ごとの降水量と気温の両方のグラフが書いてあるのでその名前が付いているのですが、最近の入試問題では降水量だけとか気温だけのグラフを使った出題となることもあります。熱帯では「熱帯雨林気候」も「サバナ気候」も気温は30℃のあたりでグラフが横ばいになりますから、降水量のグラフがないとどちらの気候なのかは判断しにくくなります。

平成25年度の福島県立高校入試問題ではマナオス(ブラジル)とキト(エクアドル)の月別平均気温だけのグラフを使った問題が出題されました。問題の内容は

『① マナオスに比べキトの月別平均気温が低いのは、キトが南アメリカ大陸を南北につらぬく「ある山脈」に位置し、マナオスより標高が高いからである。「ある山脈」の名称を書きなさい』

『② マナオスとキトはともに年間を通して月別平均気温の変化が小さい。その理由を書きなさい』

というものでした。

①の答えは「アンデス山脈」で、正答率は58.1%と比較的高めだったのですが、この問題には今後の入試対策のためのヒントが隠されていると考えたいのです。それは『ほぼ同緯度にあるマナオスに比べキトの月別平均気温が低いのはなぜか、その理由を書きなさい』という問題が出題される可能性を意識しておくということです。過去問を学習するときにはその問題を丸暗記するのではなく、それをヒントに問題のバリエーションを考えてみることが大切になります。

②の答えは「マナオスとキトはともに赤道付近に位置するから」で、正答率は部分正答も含め48.3%でした。この問題から学習しておいて欲しいのは『赤道付近では年間を通して月別平均気温の変化が小さい』ということです。「この問題そのままじゃないか」と言われそうですが、塾として注意しておきたいのは『1つの地域の月別平均気温だけのグラフを使った問題で、グラフが横ばいになっているからといってそれが熱帯雨林気候とは限らない』ということです。熱帯雨林気候と高山気候では、圧倒的に熱帯雨林気候の方が出題頻度が高いため、月別平均気温が横ばいになっているとそれだけで熱帯雨林気候だと即断しがちになります。熱帯雨林気候は30℃のあたり、高山気候は10~15℃となりますから必ず気温をチェックするようにしましょう。

出題頻度が高い温帯

温帯には四季の変化があって「地中海性気候」「西岸海洋性気候」「温暖湿潤気候」の3つの気候になります。それぞれの気候の特徴は

① 地中海性気候は「夏は乾燥して、冬は比較的降水量が多い」

② 西岸海洋性気候は「高緯度の割に温暖で、降水量は年間を通して平均している」

③ 温暖湿潤気候は「夏に雨が多い」

地中海性気候については、降水量の特徴の記述問題や、乾燥に強いオリーブが栽培されていること、冬に小麦を栽培することなどが出題されます。

西岸海洋性気候については高緯度の割に温暖である理由を問うのが定番の問題となっていて『暖流の北大西洋海流と、その上空を吹いて来る偏西風の影響による』がその解答となります。

温暖湿潤気候の場合は南半球の地域の出題となることが多いので、気温と降水量が北半球とは逆転した月になっている雨温図がポイントとなります。なお、温帯の雨温図は温暖湿潤気候に限らず、南半球の雨温図を使った問題が多くなるので、しっかり読み取るようにしましょう。

参考に近年福島県立高校入試問題に出題された温帯の記述問題の解答を見ておきます。

『夏季に降水量が少なく、冬季に降水量が多い』[地中海性気候(南半球)]平成21年度

『高緯度のわりには温暖で、一年をとおして降水量の差が小さい』[西岸海洋性気候]平成26年度

『どちらの都市も夏に乾燥し、冬に比較的降雨がある』[地中海性気候(ローマ&ケープタウン)]平成29年度

これら以外にも平成22年度には西岸海洋性気候の説明文の中で『暖流』と『偏西風』を答えとする選択問題も出題されています。他の気候帯や日本の気候もある中でこの出題頻度ですから、地中海性気候と西岸海洋性気候がどれだけ出題者に好まれているのかがわかりそうです。

乾燥帯・亜寒帯(冷帯)・寒帯 

熱帯と温帯以外には乾燥帯・亜寒帯(冷帯)・寒帯があります。

乾燥帯の砂漠気候は降水量が極端に少ないため雨温図の判断で困ることはありませんが、サハラ砂漠など世界の代表的な砂漠地帯をしっかりと把握しておく必要があります。

乾燥帯のステップ気候については少しだけ降水があるため短い草原になることと、砂漠地域の周辺に分布していることを押さえておきましょう。

亜寒帯気候については夏と冬の気温の年較差が大きくなるのが特徴で、タイガと呼ばれる針葉樹林帯が広がっています。また出題される地域はほとんどがシベリアかカナダになります。

寒帯の氷雪気候は南極やグリーンランドになりますが、あまり出題の対象にはならないようです。一方で北極海沿岸やアラスカに分布するツンドラ気候については、地球温暖化との関連で出題される可能性がありますので、短い夏にコケ類が生えるという特徴と合わせて永久凍土が融け出している地域があることに注目しておきましょう。